大管弦楽のための交響的な歌 Op. 57   プロコフィエフ

Prokofievの単発管弦楽曲は、どれも魅力的ですが、これはその一つ

JarviOp57.jpg

Prokofiev (1891-1953)
Symphonic Song for Large Orchestra Op. 57 (1934)
Scottish National Orchestra
Neeme Jarvi
Chandos CHAN 8728 (1988)

30年以上前、プロコフィエフの伝記を初めて読み
巻末の作品表でその表題を見た時の印象
これは実に強烈なものでした
彼は舞台作品とそこからの改変作が多いですから
オリジナルの管弦楽作品が意外に目立ちません
時々全く忽然とこういう曲が出現するのが面白い所です

各種の伝記を読んでみても、この曲の作曲動機は不明瞭ですが
Harlow Robinsonの《Sergei Prokofiev a biography》を読むと
初演の前年にソ連に一時帰国したことが大きいかも知れませんね

この曲をして、彼は自身が「ソビエト」の管弦楽作曲家として
その地位を獲得したいと希望していたのでは、という記述があります
当時のソ連的政治状況に触発された交響曲の状況
(ショスタコーヴィチの第2、第3交響曲など)
これをプロコフィエフ風に解釈したのか、Op. 57の3つの部分は
Darkness (暗黒)- Struggle (闘争)- Achievement (達成)とされています

ピアノスコアを聴楽した友人Miaskovsky (ミャスコフスキー 1881-1950)は
「まったくもって(国策に?)合ってないよ」みたいなことを言ったようです
「もっと別のスタイルで書く方が」的なことも…

この曲は、私が聴楽した限りでは、別の作品への転用とか
そういったものは皆無だと思いますが、いかがでしょうか?
下手に使ったりすると、インタビューで「Op. 57から引っ張ったよ」
なんて言おうもんなら、どこから魔の手が伸びてくるかわかりませんし

聴楽しての印象は、交響曲第2番を湿っぽくしたような感じがします
(2番煎じでは決してないのですが…)
とにかくも、プロコフィエフ風の「暗黒とはこういうものか」と
恐ろしげな旋律とは別の、奇怪で異様なうねりで迫ってきます

これが、「闘争」に移行すると、いかにも「らしい」運動性が顔を出します
リズム的には前向きなものの、輝かしさは微塵もありません
あまり強いアクセントを感じる瞬間がないので
プロコ風でありながら、あまりカチッとした所が感じられない…かな
主題はかなりはっきりしたものが数種類ありますが
それらが複雑に重ね合わせられて、独特の混沌になります
(1930年前後の作風として、この作品も孤立したものではないでしょう)

私の感覚としては、ソ連当局の欲しているような
「輝かしい英雄的活躍と、大勝利」というのとは隔絶していて
「死力を尽くして戦い、遂に斃れるが、その後の勝利によって顕彰される」
みたいな趣を感じますね

第3の部分である「達成」は、翳りのある弦の幅の大きな旋律に始まり
「待ってました!」と言わんばかりの多少捻くれ気味の木管から
マーチの主題が次第に規模を拡げて行きます
どこか奇妙な感じの拭えない旋律線には
「本当に勝利したのだろうか」と半信半疑ながらも
何かに前向きにならないとやってられない、という気持ちも窺える

この行進曲は、思わず嬉しくなるような小太鼓の派手な打撃を伴って
素晴らしく華やかに進んで行きますが、それも遠ざかり
一瞬内省的になるのか、音楽が少しずつ厳粛になって行き
音量としてはかなり大きな方であるものの
長調的でありながら、何とも不思議な翳りのある和音で締めくくられる

「記念碑的性格、親しみのある簡潔性、明瞭な形式感」
これら全てを欠いた(要するにソ連受けしない気まんまんの)音楽に対して
Miaskovskyの予感は当たってしまい
1934年(昭和9年)4月14日のモスクワに於ける初演は
「拍手が3つ鳴っただけ : literally three claps」の完全な失敗だったようです
「少数派のための交響的独白」とか「滅びゆく個人主義の悲しい物語」など
散々に書かれたようですねぇ…

私は1989年、社会人最初の年の勤め先からの帰り道
いまはない池袋のWAVEにてこの盤を発見、異様な興奮を覚えつつ
聴楽の全体的印象としては「Miaskovskyは鋭いな」という感じでしたが
多くの愛すべき瞬間により、今も時々はCDプレーヤにかかる曲なのですね
特に「達成」の部分は、プロパガンダ的馬鹿っぽさや軽薄さから離れて
私にとってはいつもジーンと来てしまう音楽なのです

プロフィール

quietplace

Author:quietplace
聴楽記へようこそ!
関心事を書きちらしています。

FC2カウンター
ブログランキング
以下のランキングに参加中です

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
日本ブログ村 PVランキング
よくわかりませんが、取り敢えず装着してみました。
最新記事
カテゴリ
最新コメント
ブロとも

染のブログ
月別アーカイブ
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSリンクの表示
QRコード
QR