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天才の作品を大らかに鳴らす☆   シューマン

ドイツが本拠地の原田さんの録音をここで書くのは2度目。前回は2011年の10月6日、実に7年振り
同時に当《聴楽記》がこんなに長く続いていることにも驚く☆

HideyoHaradaSchumann.jpg

シューマン Robert Schumann (1810-1856)
幻想曲ハ長調作品17 Fantasie C-dur Op.17 (1839)
原田英世 (ピアノ) Hideyo Harada (piano)
アウディーテ Audite 92.577 (SACD, 2009)

今回のシューマンは前回のシューベルトと同時期の録音で
昨今では意表を突くような残響感のあるもの
(少し強めのリバーブがかかっているように感じる)
ピアノの音が「ワーン」と周囲の大気に溶け込むが
ピアノ自体の動きは鮮明にわかるという方針でしょうか

演奏時間(15:04/8:40/11:33//35:17)と
私が聴楽して来た同曲の最長記録ではないかな
ちなみにリーズ・ド・ラ・サール(Naïve)は(14:11/7:38/10:11//32:00)

原田さんのパフォーマンスは、特定の楽章を強調するものではなく
シューベルトでも示された彼女の演奏方針である
各フレーズの接続部分に余裕を持たせ、大らかさを感じさせるものです

最初はこの演奏時間にちょっと驚いてしまったのですが
実際に聴楽すると、そんな些末な気分とは全く無関係な
巨大な世界が築かれていることに更にビックリします
大管弦楽の響きとどこかで繋がるような…

ハーモニーも旋律も実によく練られた
そんな作品が作曲されたのが1839年、もう179年も前なのか
ベートーヴェン没後12年、ブラームス6才、チャイコフスキーは生まれる前年
西郷どん12才、大久保利通5才。quietplace マイナス126才
こんな時期にこんな独自性のある作品を書く人間を
音楽の神様は長くは地上にはいさせないって感じにもなるだろうな
(私自身はシューマンより既に7年も長く生きている!)

音の動きの幅は、他の名曲よりも不思議に狭い感じがするんですが
それでも単調になりません
第1楽章でやや激した曲調の中
僅かに煌くような高音が印象的に響く

フレーズ間が一瞬無音になることが度々あり
その「無」からまた音が生まれて来る
この巧みな演奏計画が最後までブレない…

第3楽章は、テンポ設定の勝利というか
全体に低めの音域で書かれている音楽が
沈思しつつ柔らかな表情で進められて行きます
こうすると、終結近くの清澄な盛り上がりが実に効くのですね☆
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暁の歌  シューマン

シューマン晩年の作品を集めた渋い曲集から…☆

TobiasKochSchumann.jpg

シューマン Rebert Schumann (1810-1856)
「暁の歌」作品133から第1曲ニ長調 落ち着いたテンポで
Gesänge der Frühe 1. Im ruhigen Tempo
トビアス・コッホ (ピアノフォルテ) Tobias Koch (1968-)
ジェニュイン Genuine GEN 86062 (2007)

まとまった曲集としてはシューマン最後のもの
初めて聴楽した時からタイトルが強い印象を持っていた

簡素なコラール旋律が静かに開始
この旋律の周囲に控えめに音が添えられていく
添えられる音は、時に意表を突く不協和音を形成するが
暁の静寂を壊すことなく進行する

夜明け前の薄明の気分をよく表していると思う
作曲年からは150年以上が経過しているが
この時間帯の空気は世界共通なんじゃないかな

完全なる静寂と
朝の「波動」みたいなものが僅かに混ざり合う絶妙の一瞬
何だか大きな安心感

活動の前の一日で最も静かな時間帯
ふさわしい音の数と配置

魅せるピアノ☆   シューマン

とても若い頃から (てかまだ若いけど) 個性的な録音を出している人ですが
先日のガーシュウィンといい、何やら良い感じのパフォーマーになって来ましたね


KempfSchumannOp13.jpg

シューマン Robert Schuman (1810-1856)
交響的練習曲 作品13 Etudes symphoniques op.13 (1837)
フレディ・ケンプ Freddy Kempf (1977-)
ビス BIS 2010 (SACD, 2012)

私にとっては今までは、名前のみ有名で
終楽章以外は実際どんな曲なのか殆ど覚えていませんで
(これまでに実演を2回も聴楽していたにも関わらず)
まともな聴楽は初めてと言っていいですね

で、印象は…うぉおお「名曲」です☆
ケンプは、関心を抱いた曲を録音していくタイプのようで
「○○全集」とかとは無縁の道を行っているようです
シューマンは、若い頃に同じBISに《謝肉祭》を録音していますから
彼にとっては比較的重要な作曲家なんでしょう

今回は曲の全貌が初めてわかった感じの聴楽ですが
沈んだ表情で始まり、終曲の燦々とした響きがわかっていたとしても
なかなか長調の支配下には音楽が進んでいかない感じで
遺作の第5変奏で、ようやくホッとするようになっています

通常の遺作変奏に加えて、1837年作の練習曲も2曲入れているため
全曲の演奏時間は33分34秒と、結構な重量ですが
ここは、ケンプの深い音色の演奏でどんどん進みます
曲全体の司るハーモニーの流れがあるようで
途中のどの辺りを切り取ったとしても
巨大な音楽の一部にあるというある種の安心感があるのかな

ペダル操作音も含む、奏者と楽器の周囲の大気を
絶妙な感じで収録している優秀な録音だと思います

満を持して飛び込む終曲が大傑作☆
これは結構速弾きな趣なんですが、無理な感じはなく
むしろとてつもなく大きな説得力を感じます
(この人の良いところが発揮されている)
クライマックスに向けてのタメなんかは本当に上手い☆
実に実に演出巧者つかエンターテナーだよなぁ

昨晩、ビールを飲んでいい気持ちで横になっての聴楽でしたが
だんだん盛り上がってきて、思い切り集中してしまったです☆

詳しいことはわからないのですが
終曲は、全曲中では例外的な長調の箇所にもかかわらず
きちんと統一感は保たれているというか
最初の主題のハーモニーの進行が底流にあるように感じる
ケンプのこの速い音楽運びが
このことを非常によくわからせてくれると思うんですよ☆

盤石の低音に支えられた自由な幻想   シューマン

本ブログ記事では、初のシューマンです

LaSalleSchumann17.jpg

シューマン Robert Schumann (1810-1856)
幻想曲 ハ長調 作品17 Fantasie in C-dur op. 17 (1836)
リーズ・ドゥ・ラ・サール (ピアノ) Lise De La Salle (1988-)
ナイーヴ Naive V5364 (2013)

作曲の契機は、リスト提唱の「ベートーヴェン記念碑建立募金」へ寄付だそうで
最近発売された、ユンディ・リのベートーヴェン《皇帝》の録音に対して
この曲がカップリングされていた理由もわかって嬉しい気分です
(時々、「して脈絡は?」と思うような組み合わせに遭遇しますから)

ラ・サールのCDデビューは2002年の録音で、当時14才でした
今回の盤のジャケット写真はそれから12年後
当たり前ながら、大人っぽくて何だかクラクラして来そうですよ、ワハハ
レパートリがシューマンというのは、どこか意外な気もするのですが
この人は、演奏にしても録音にしてもかなり慎重のようで
実際に鳴らしている音が、華やかというのとは趣が異なる気もします
自分の音にふさわしい曲の選び方をすると言えるかも知れません

LaSalleRavelRachmaninov.jpg
こちらは、2002年のデビュー盤☆

3楽章からなる曲全体が、盤石の深さを湛えた低音に支えられ
現代ピアノの性能が生じさせる凄味を感じずにはいられません
この低音に支えられ、自由に展開する音楽は気紛れな印象なく
どっしりとした存在感を強烈にアピールしていると思うんです

シューマンの独奏曲は、私の聴楽機会は少ないのですが
(Op. 17の初聴楽は実演で、その時の感激がまだ記憶にあります)
ただ勢いで引っ張るのは困難な両端楽章の
微妙な転調によって移り変わる時間は
もう「楽譜の終始線が来て欲しくないな」と思わせるのに十分です

演奏時間は (14:11/07:38/10:11//32:00) と
これまた壮大な広がりを感じさせるもので
彼女の録音としては、ショパンアルバム以降から見られる
(特に第1楽章の14:11というのは、本当に独自の美しい世界だ!)
十分な余裕を持たせた確固テンポ運びをより強く感じさせられますね

個人的に聴楽の幸せを感じるのは
第1楽章の終結近く、静かに高音が周囲を照らす辺り
第3楽章の開始の緩やかな分散和音でしょうか
特に後者は、夏の夕暮れ近くに、散歩をしたり
窓を開けて読書する時に見える静かな景色
これを想像せずにはいられないんですよ☆


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quietplace

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