知らぬ間に白熱の盛り上がり☆   ハチャトゥリアン

この曲ってこんなに凄い曲だったのか…いやいや参りました

ArabellaKchaturian.jpg

Khatchaturian (1903-1978)
Concerto for Violin and Orchestra
Arabella Steinbacher (violin)
City of Birmingham Symphony Orchestra
Sakari Oramo
Orfeo C 623 041 A (2003)

この曲は、過去にCDでも実演でも聴楽体験があります。が
いまいち、なんつーか、どんな曲だったか記憶がありませんで
平たく言えば「げげっつまんね~」って感じだったんですが
意外なところで大ヒット演奏が出て来てしまいました

聴楽記においても、頻出しているArabella Steinbacher
(アラベラ・シュタインバッハー 1981-)
以前にここで書いたShostakovichは、後からのリリースになり
今回のこちらは、CDデビューです
パフォーマンスの驚異的な安定度は、この盤で既に全開でした

この曲の最初の売りの部分であろう
第1楽章の第1主題ですが、意外にもここをサッと通過してしまいます
奏者によっては渾身の力を込めてガリガリ進める所なんですが
意外にも、軽やかな感じで運んで行きます
まぁ既にこれが後に続く布石になっていることを
聴楽を続けて行くうちに、もう本当に納得してしまうことになります

今まで聴楽した演奏が、第1楽章でハッタリかまし過ぎて
なんだか未整理、散漫な印象になるのを
この盤のアラベラ嬢が回避出来ている要因は何か?

第1楽章は、まず第1主題で淡々と挨拶してから
以降カデンツァに向かって次第に盛り上がって行くというか
強烈に疾走するという印象でもないのですが
インテンポでするすると進んで行くので、とにかく爽快なんですね
変に独善的なテンポのいじり方を全くしていないようなので
大きく上下するパッセージをどんどん切り抜けて行く内に
聴楽しているこちらがバンバン盛り上がって来てしまうというマジックです☆
緻密さをどんどん凝縮して行くと、静かな興奮の坩堝になって行くような…すげぇ

曲の中身の話をすると、カデンツァから第1主題の要素に復帰して行く
その過程が巧妙でカッコいいと思います
第2楽章でも、精密な技巧の展覧会にオーケストラがハッスルしているのか
後半の盛り上がりでやけに爆発しているのが愉快ですよ

第3楽章は、主題のリズムに面白い仕掛けがしてあって
これはハチャトゥリアンの作曲傾向として目立つ特徴でもありますが
ここでも淡々と始めて、ぎくしゃくした感じを強調せずに
更に鋭く鮮やかな芸を聴楽する耳に放り込んで来る感じになります
いや~、楽章途中でも自然に拍手したくなって来ますもん
あぁでも協奏曲って、元々そういう風に反応したくなるもんなんでしょう!

Bookletにはどこにも書いていないのですが
この盤はライブ録音なんじゃないでしょうか
結構演奏する側からも、聴衆の方からの咳き込みも聴こえて来るような気がします
拍手は収録されていませんが
物凄い拍手が聞こえて来ても全くおかしくない演奏だと感じますねぇ


名こそ惜しけれ   ハチャトゥリアン

なぜ、この音楽を聴楽すると熱くなるのか考えてみると…

KhachaturianKarabitts.jpg

Khachaturian (1903-1978)
Dance of the Gaditanian Maindens and Victory of Spartacus
(from the Ballet "Spartacus")
Bournemouth Symphony Orchestra
Kirill Karabits
ONYX 4063 (2010)

それほど多くはない写真等を見て思い出すのは
かつて地上波の日曜洋画劇場で何度も見た映画《ベン・ハー》
しかし今回のバレエは、輝かしくも静かに終わるBHとは違うようです

上記の曲目タイトルにもあるように
かつての平和を奪われたスパルタクスは敵に勝利するものの
逆襲を受けて命を奪われる悲劇が待っているようです
(キューブリック監督の映画には小さな救いがあるようですが)
ただ、バレエはそこに主眼が置かれているのでもないようで
「何かに向けて立ち上がる力強さ」にあると推測しています
実際にバレエの舞台を見た人たちのレビューを読んでも
何となく雰囲気は伝わって来て、こちらも熱くなって来ますね

Aram Khachaturian (アラム・ハチャトゥリアン)の音楽にも
勿論、その熱さは思い切り詰まっています
たまたまこの側面でこの作曲家は語られることが多いのですが
だからこそ、正にそこを語りたくなって来るというもの

今回紹介の盤は、気鋭のKarabits (キリル・カラビッツ 1976-)の指揮
大体この年代の線が、まだ若いのにソコソコのポストに就いていますね
盤を聴楽した限りでは、音楽自体が激熱であるものの
結構整然と進めているのではないかと思われます
やはり上に行く人というのは、曲のキャラクターに関係なく
一定の水準において安定して全体を統御する人に限られるのでしょうね

曲としての初聴楽は、Jarvi 大人のChandos盤でした
今回採り上げる曲も、当時最も印象に残った箇所に当たります
劇全体の悲劇性とかを別にして
主人公スパルタクスの世界はこの曲に凝縮されていると感じています

まず最も印象的だったのはこの曲の冒頭の箇所
もともと女性ダンサーの踊りの部分のようですが
私としては、少しずつ宿敵ローマの執政官クラッススを倒そうと
少しずつ目標に接近し、ついに機会は訪れたという
ただ一度の好機にあたってのスパルタクスの静かな気概を感じます

以後、いかにもハチャトゥリアンな旋律が、ラヴェルのボレロのように
てか、構造としてはボレロそのものなんでしょうけど
少しずつ趣を変えながら次第に盛り上がって行きます
ここは作曲者一流のテンションのかかった音が時折置かれていて
いやがうえにも緊張感を高めて行く…

Tempoが一気に速まって、以降は怒涛の攻めになりますが
ここで管弦楽をツンのめらせないのが指揮者の役割なんでしょう
実に上手くまとめていると思うのです
打楽器(特にシンバルと大太鼓)が印象的で
なかなかに心地よいプレッシャーを感じる
録音はとかく目立ちがちな金管楽器を強調するというよりは
全体の轟然たる響きを、けばけばしくさせずに捉えているようです
目の前で聴楽していなくても、とにかく身体が自然に動きそうになる

高潮する音楽の中でも、旋律自体が微妙な翳りを帯びているので
どことなく、勝ち目はないかも知れないが、「名こそ惜しけれ」というのか
己の大事にしている気持ちのために突撃する者どもの気分が感じられて
単調どころか、どこか重厚なものさえ感じさせてくれるのでした
プロフィール

quietplace

Author:quietplace
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