自然に耳に届く  J.S.バッハ

「心にしみる」という言葉を敢えて使いたくなりました

HiromiIkeiArsProduktion.jpg

J.S.バッハ J.S.Bach (1685-1750)
トッカータホ短調BWV.914 Toccata E-Moll BWV.914
6つの小前奏曲集BWV.933-938 Sechs Kleine Präludien BWV.933-938
フランス組曲ハ短調BWV.813 Französische Suite C-Moll BWV.813
フランス組曲ロ短調BWV.831 Französische Suite H-Moll BWV.831
池井博美 (ピアノ) Hiromi Ikei (1983-)
アルス・プロダクツィオン Ars Produktion ARS 38 172 (2014)

実に端正なモダンピアノのバッハ
自然な時間が進行する

薄く日の当たる窓際で外を見ている
すぐ近くでバッハを練習している音が聞こえる
別の考え事をしているので、ちゃんと聴いてはいない
しかし、耳にはしっかりとバッハが入って来る
別のことを考えつつ、バッハは耳に入るがままにさせておく
そんな雰囲気で過ごす約60分間

大気に自然に音が溶け込むとはこういうことを言うのかな

一日の終わりに聴楽する3曲  J.S.バッハ + ショスタコーヴィチ

私的一日の終わりに聴楽したい3曲です
できれば3曲書かれた順に聴きたい

LevinasBachWTC.jpg

バッハ J.S.Bach (1685-1750)
前奏曲嬰ハ長調 BWV.872 Prelude in C sharp major BWV.872
平均律クラヴィーア曲集第2巻より From Well Tempered Clavier Book ll
ミカエル・レヴィナス (ピアノ) Michaël Levinas (1949-)
アコール Accord 476 1054 (2003)

穏やかでシンプルなフレーズの繰り返しから成る曲
少し眠いくらいでの聴楽が良いかな
何かを集中して考えるのではなく
適当な風景がゆっくりとシャッフルされて行くような感じ
心地よい日の当たる庭、または草原
ゆるやかな風に、草花がゆっくりと流れる

BorisPetrushanskyDynamic.jpg

ショスタコーヴィチ Dmitri Shostakovich
前奏曲ハ長調 Prelude in C major (from Op.87)
24の前奏曲とフーガ Op.87より From 24 Preludes & Fugues Op.87
ボリス・ペトルシャンスキー (ピアノ) Boris Petrushansky (1949-)
ダイナミック Dynamic CDS117 (1992)

ハ長調で書かれた音楽の傑作の一つだと思う
微妙に溶け合わない音どうしが隣り合う4分弱
不思議な浮遊感が周囲に満ちる
前の曲の時間からは日が傾き、次第に影が差す
気分は次第に落ち着きをみせてくる
何もしない、何も起こらない。それが心地よい

RafalBlechaczBach.jpg

バッハ J.S.Bach (1685-1750)
「主よ、人の望みの喜びよ」 “Jesus Joy of Man’s Desiring”
マイラ・ヘス編曲 Transcr. Dame Myra Hess
ラファウ・ブレハッチ (ピアノ) Rafał Blechacz (1985-)
ドイツ・グラモフォン Deutsche Grammophon 00289 479 5534 (2015)

ブレハッチは、編者自演の録音よりもわずかに遅いテンポで弾いてくれる
いよいよ一日が終わる。夜
照明をほとんど消したステージでピアノが鳴る
時間が度々止まる微かな音が聞こえるような気がする
バッハの旋律は、その中を唯一止まらずに細くたなびいて行く
何か聞こえるか聞こえないかの微妙な時間が来る

チェンバロの響きをリスペクトする現代ピアノ奏法  J.S.バッハ

初聴楽は本を読みながらでしたが、!結局は聴き入ってしまいました☆

BachGoldbergLifschitz.jpg

バッハ Johann Sebastian Bach (1685-1750)
ゴルトベルク変奏曲 "Goldberg-Variationen" BWV988
コンスタンティン・リフシッツ Konstantin Lifschitz (piano, 1976-)
オルフェオ C864 141A (2012)

この曲を初めて聴楽したのはたしか2000年、35才の時だったか
タイトルだけは知っていたんですけどね、何か難しそうな印象があったなぁ
何となくのイメージより、実際に聴楽してどんな風に気に入り
またどんな風に気に入らないか見極める…
聴楽姿勢に変化の兆しが出たのが今から15年くらい前だったんですね

個人的にはピアノでの演奏が好きですね
チェンバロは、距離をおいて幽かな典雅さを愉しむには最高の楽器ですが
私が聴楽した録音は、うむむ、楽器が「目の前にあり過ぎる」感がハンパなく
いささか疲れる感じがするんですね
ということで、ピアノ盤はこれまでに10種程度を聴楽して来ましたが
ここに来て、ついに「超えた」録音が登場しました

リフシッツは初聴楽。彼は17才の時にもこの曲を録音していますね (Denon)
(しかし、フツー17才でこの曲は録音しないだろ☆)
今回は、36才になる年の録音で、約20年ぶりの再録音
聴楽してちょっと驚いてしまったのは、この曲におけるピアノの音

私がこれまで聴楽して来た盤は、ゆったりとしたテンポで
「しっとりした」感じの音で運んで行く感じのものでした
今まではシフ盤 (ECM)がお気に入りだったのですけどね

リフシッツの奏法による部分が少なからぬ要因とは思いますが
彼の出す音は「しっとり」という感じではありません。しかし…
しっとり感を完全に閉め出すまでには行かない「軽やかさ」がある
不思議だ…、何とも言えない「清潔感」とでもいうのかな

響きに「水分」があるとすれば、完全には乾ききってはいない
かといって「過多」の方向にも行かない、不思議な端正さを感じます
この「ひたひたと進む」ことに迷いが感じられない、明晰寄りの演奏…☆
しかし、「全てを明快に」とまでは行かない所で寸止めしている
チェンバロを顕彰 (リスペクトか?) するような現代ピアノの鳴らし方
やっぱり「おっさん」になってからの再録音
周到な準備と研究の賜物とでも言うのでしょうか? 

テンポと座右の銘盤の関係   J.S. バッハ

「いい時間」を得るために盤をプレーヤに載せる…、最高の愉しみです

CoppeyBach.jpg

Johann Sebastian Bach (1685-1750)
The Six Cello Suites
Marc Coppey (cello)
AEON AECD 0316 (2003)

以前にもチラッと書いた記憶があるのですが
組曲の第1番ト長調BWV1007の第1曲のポイントに関しては
「まずはTempoの安定」と書いていました(記事番号82, 09/03/2011)

その後、たまたまネットでの試聴の折
正にBWV1007-1での「Myツボどんピシャ」の演奏に遭遇しました
前述記事番号82のOstertag (Coviello)盤の演奏時間と比べても
数分の小曲とはいえ、約50秒もゆっくりしています (2:49)

このTempoに触れた時、珍しく非常に衝動的な気持ちになりました
まぁその「すぐにでも手に入れたい」という気分です
この当時は一時的に品切れの時期だったようですが
すぐに海外のAmazonで復活しているのを発見!

しかし、Tempoというのは不思議なものですね
思わず「おぉ」とか思う新譜の情報を得て
当然に、それを聴楽する時のことを想像する訳ですが
やはり、想像の中でも自分の好みの速度で音が鳴っているんですねぇ
少しでも理想のTempoと違う場合には
それは座右の銘盤とはなりにくい、厳しい点があるような…

この速度は、私なりの「バッハの世界に入る速度」のようです
遅い速いのどちらにしろこれより離れ過ぎてしまうと
ちょっと「世界」には入れない
「入れない」演奏がダメという訳じゃない
ただ、自分的に「これじゃない」と感じるだけなんですけどね
もうはっきりとそこに「どこか落ち着かない気分」が醸成される…
本当に趣味というのは気まぐれですな

こういう曖昧でありつつ厳しい関門を通り抜けた後に聴こえてくるのは
もうこの忙しい世の中で体験可能な中でも、最高の心地よさなんでしょう

どんな人にも「ついプレーヤ」に載せてしまう
そんな盤があると思いますが、私の場合には
なぜそれは「そんな盤」なのか、ちと今回考えてみた感じです

Marc Coppey (マルク・コッペイ 1969-)の演奏は
彼の他の盤でもそうなんですが、どういうわけか
峻厳さとか、強烈な熱気とは離れた所にあるような気がします
しかし、一貫した安定性である種の世界を創り出す
そういうことは、おそらくあるんでしょうね

物凄い喧騒からは遠く、完全な無音の間に近いが、静寂ではない
ほとんど黙っているけれど、時々話しかけて来られるような
でも、特にこちらから気の利いた返事をする必要もない安心感
これを求めて、時々どうしても手が伸びてしまう盤なのですね

静かな夜、対話   J.S. バッハ

唐突ながら、私は「落語」って未体験なんですが
名人の語り口って、この曲の良い演奏と共通点がある気がします


BachOstertag.jpg
J. S. Bach (1685-1750)
6 Suites for Violoncello Solo
Martin Ostertag (violoncello)
Coviello Classics COV 20708 (2006)

この曲のCD選定は、なかなか悩ましいものがあります
一番重視するポイントは、tempoの安定
興に乗ったのか、伸縮が極端なのは…ぱす
BWV1007の最初の曲が忙しいのも…ぱす

この冒頭のtempoが高速な演奏が多いんですよね…
が、これは自分の記憶の隅にある印象によるものであると
最近になって気づきました
TV番組で、このBWV1007の冒頭を子供が練習している
そんな場面に出くわしましたが
その演奏は、まぁ子供だから当然ながらゆっくりtempo
(一般的な演奏の約2倍弱の緩やかさかも…)
実はこの時の速度が私の記憶に刷り込まれておりました
「このゆっくりtempoでないとね☆」と思っていましたが
ちょっと考えてみればわかること
冒頭をゆっくりやってしまうと、全体が間延びする
自分の速度感覚というのは、本当にアテになりません

まぁ、やっぱ極端な伸び縮みtempoの演奏のみは…ぱす
これで、いろいろな盤が購入候補に昇るようになり
Amazonと国内店舗価格の乖離が激しい今回の盤を捕捉
(塔約\5400、尼約\2000+送料\300)
アートワークの佇まいも私好みなんで、購入の運びに♪

演奏者の解釈に飛び上がらんばかりに驚愕する
これは私が聴楽に最も不要と考える要素であります
その点でこのOstertag (オステルターク) の聴楽は正に快体験
もう本当に淡々と進めています
これは、おそらく技術もそれなりにあるからではないか?
だって素人の私の耳にさえ、音程が微妙な録音ってありますからね
そういう「ギクッ」という瞬間は、特にというか、全く感じませんでした

「絶対必携の永久保存盤」…、これは私の蒐集感覚では
ちょっと余裕がなさ過ぎと感じます。そこで
「CDラックにあっていい。中古屋さんに送り出す理由もない」
こんな所でいいんじゃないかと思います

この曲を堪能する最もよい空間、時間はいつか?
仕事も終わり、夜。明日に備えて横になって本を読んでいる…
(翌日が休日ならばなお可、最高に可)
音量はやや絞り加減で、視覚的な本の情報を味わい
耳はどことなく周囲の音を取り入れている…

そうするとですね
絞った音量による、明瞭と言い切れないCelloの音が
完全には聴き取れない、人間の対話のように聴こえるんです
これが、どこからともなく流れて来る

静かな夜。殆ど外の音も聞こえず、ステレオからはJ.S.Bach
やや弱く「そうだな…、…、うん」「でね、…ほぅ、…、ふふふ…」
内容はわからないけど、暖かく、落ち着いた淡々とした会話が聞こえる
私はそんな豊かな錯覚に捉われるんですね
プロフィール

quietplace

Author:quietplace
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