モダン、豪壮と繊細   ラヴェル

DGに限らず、もしかしたら最多同曲異演聴楽機会数の曲かも☆

RavelYujaLeftHand.jpg

ラヴェル Marice Ravel (1875-1937)
左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調
ユジャ・ワン Juja Wang (1987-)
チューリッヒ・トーンハレオーケストラ Tonhalle-Orchester Zurich
ライオネル・ブランギエ Lionel Bringuier
ドイツ・グラモフォン Deutsche Grammophon 00289 479 4954 (2015)

DGのラヴェルコンチェルトは
80年代にアルゲリッチ (1941-、両手)、ベロフ (1950-、左手)
90年代にツィメルマン (1956-)、00年代にユンディ (1982-、両手)
10年代に入りエマール (1957-)、ワン (1987-)と続く (いやぁ凄いな…)
とにかくもう「名手」と呼ばれるに値する奏者の録音がありました
とうとう80年代後半生まれが来ました☆

あ、DGで「左手」を録音する女性奏者は初聴楽です
モニク・アース Monique Haas (1909-1978) の1965年録音は未聴ですが
そっちも何だか聴きたくなって来ましたねぇ

個人的にはこの曲がラヴェルの最高傑作だと思うんですよ
モダン、豪壮と繊細の側面を兼ね備え
それら要素の絶妙な融合が楽しめる稀有な曲という印象です

でもって、今回のユジャ、さすがに2015年の録音という感じです
ピアノの打鍵が出す音の「空気感」というか、これが実に鮮明です
中から低音域は特に「素晴らしいっ」としか言いようがない!

昔のレコード藝術誌でよく書かれていたような
「洒脱」とか「フランスのエスプリ」って感じはしないな
てか改めて「フランスのエスプリ」って何だろう?とか思ってしまう☆
まぁ「小洒落た感じ」ってやつが近いんじゃないかなぁ?

ま、ユジャのピアノはそういう印象批評的フレーズを吹き飛ばすような
輝かしい「今ここ」の奏楽ですね。これまで使うことは避けて来ましたが
これこそが「スタイリッシュ」または「モダン」というやつなんじゃないかな☆

オーケストラも、ジンマン時代の印象が強いですが
指揮のブランギエについては、まだ30才くらいなのに2012年からここの監督なんですから
これは何だか大変素晴らしいことが起こる前兆の記録なのかもね☆
なかなか強力で存在感の強いサポートです

バウゼ (Chandos) の演奏以後、これ以上何があるのかと思っていた曲ですが
(ちなみにバウゼは私的「殿堂入り」録音です)
パフォーマンスの世界は日進月歩なんですね。恐るべしユジャ、今後楽しみだわ
そうやっていろいろ聴楽して圧倒されて…何と愉しい趣味なんでしょうね☆

この曲は一つのクレッシェンドでできている   ラヴェル

実に久々のボレロ聴楽及びラヴェルネタとなりました

KrivineBoreloZigZag.jpg

ラヴェル Maurice Ravel (1875-1937)
《ボレロ》 Bolero (1928)
ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
Orchestre Philharmonique du Luxembourg
エマニュエル・クリヴィヌ Emmanuel Krivine (1947-)
ジクザク・テリトワール Zig Zag Territoires ZZT311 (2011)

先日、新宿のディスクユニオンにて未開封1100円にて購入したものです
Zig Zag Territoires のCDはジャケットの装丁を
以前とはかなり雰囲気の異なる感じに変えて来ています
所属アーティストの過去の他レーベル録音の再発売とか
なかなかに魅惑的な企画を発信していて、私としても要注目です

クリヴィヌは、ドビュッシーはTimpaniレーベルで出していますが
ラヴェルはZigZag からで、ともにフランスの会社ですが
この辺りは、何か録音方針とかで使い分けているのでしょうか
管弦楽は、ルクセンブルク・フィルと同じなのも興味深い

クリヴィヌのボレロは、以前に実演を聴楽体験しています
(2001年4月27日、読売日響特別演奏会、東京藝術劇場)
オーケストラも実に華やかに鳴っていたと記憶していますねぇ

その時の演奏時間がどれくらいだったか、全くわかりませんが
今回は、13:51と結構な快速です。ジャケットの装丁は魅力ですが
セカセカした味気ない演奏だったら、即中古店行きかなぁと
若干の懸念がありましたが、そうはなりませんでした

この演奏で、私は今回何を最も意識させられたのか?
それは、この曲が一つのクレッシェンドで構成されていることです
速さを意識し過ぎて、無表情かつ機械的な演奏には行かず
ソロで主題が吹奏される序盤から、視界は良好
しかし、何もかも見え過ぎ、という所までは行かず、きつい感じもしません
最初のフルートからして、やや太目の音色というのかな
強い音がして来るのですね

このテンポの中で、各奏者は楽器の特性を上手く録って貰おうとか
いろいろ意識しているんでしょうね
特に序盤のクラリネットとオーボーが、洒脱で思わず「おぉ☆」です
「マエストロの速いテンポの中でも、俺はキッチリ遊ばせてもらうぜ!」
(私はキッチリ遊ばせてもらうわ!)
というような?奏者の思惑が感じられるようで、ちょっとした驚きです

ボレロの録音を今まで聴楽して来た限りにおいては
曲が進む間もテンションの凸凹があるような気がしていたのですが
今回のこの演奏、やはり楽譜指定のクレッシェンド通りの気が…

高潮する音の奔流が止まらないですな
主題の18回目が終わると大詰めですが
ここの入りの所で多少リラックスする演奏が多い中
クリヴィヌは楽譜に忠実な、実は数少ない指揮者の一人かも知れません
ここから間髪入れずに更に力と熱がこもるというのが、何というか、凄い

整然と轟音が鳴るという感じではないですね
オーケストラに熱が広まって行くという感じです
「温度が上がる」という表現が良いような気がする…
静謐なジャケットからは、このような熱い演奏は想像しにくいのですが
いつものボレロ聴楽とは違う興奮体験が得られたことが嬉しいなぁ


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舞踏幻想曲   ラヴェル

ラヴェルの曲は、どれがベストとかいいにくい感じがしますね
どれがもう何て言うのか、ラヴェルとしか言いようがないんですから


BoulezRavelDaphnis.jpg

ラヴェル Maurice Ravel (1875-1937)
管弦楽のための舞踏詩《ラ・ヴァルス》
La Valse, Poeme choreographique pour orchestre (1928 or 1929)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 Berliner Philharmoniker
ピエール・ブーレーズ Pierre Boulez (1925-)
ドイツ・グラモフォン Deutsche Grammophon 447 057-2 (1993)
(中古:2012年12月、ディスクユニオン池袋にて購入)

ラヴェルの作品だから、お洒落で華麗で、だけとは限りません
その傑作群の中にあり、どこか異様な表情も見せる異色作と言えるかも
19世紀ウィーンへのリスペクトもあるのでしょうが
1914年に着想(実現せず)された交響詩《ウィーン》は
第1次大戦(ラヴェルも従軍した)によって
作品に「美」のみを散りばめること
これをラヴェルに断念させてしまったかも知れません
究極の美しさを持つ舞踏の瞬間と
そんな愉悦の時間が凶事によって崩壊させられて行く
どことなくラヴェルの苦しみを察してあげたくなるような音楽になりました

当時の世相をどこかに反映したような
異様な側面を意識させられるような演奏なら
バレンボイム指揮パリ管弦楽団(DG, 1981)が記憶に残りますが
これは、この曲の謎の側面をよく出したと思います
ラヴェル作品の一解釈として興味深く
ブーレーズ盤の登場までは、この曲といえばバレンボイムでしたね

しかし、《ラ・ヴァルス》の美しい瞬間も愉しみたい
無意識にそういう録音を探していたような、そんな時が続いていたのかなぁ

私の初聴楽はもう30数年前のFMエアチェックだったと思いますが
当時のテープ録音では、この曲の良さはわからなかったですね
音量が大になり、音楽の輪郭が明瞭な箇所でのみ
「おおっ!」とか、はしゃいでいたような気がしますよ

まぁそんな、大音量の華々しい部分のみでは、楽しみ方にも限界が…
今までにも数種類の演奏で聴楽しましたが
初めてこの曲の全体的な美しさを認識させてくれたのが、今回の盤です

録音計画の勝利とでも言うのでしょうか
既に今から20年前の録音でありながら
「明瞭」とは別の表現を使いたいのですが、言葉が見つかりません
「よく聴こえる」んですよ。曲を構成して、流れを支える要所の音達がね

ワルツの三拍子の気持ち良さとは異なるような…
変幻自在の時間の渓流の流れに乗る快感かもね

鋭角さとは一線を画す音響の収縮を堪能する13分43秒
今まで聴楽した演奏中だと、ゆったりした方ですね
一つの旋律が宙に吸い込まれると、また別の音が空から顕れる
それらを載せて進む管弦楽のノリが実に自然と感じます

「いつものベルリン・フィル」とは違う側面だと思うのですが
細部においては、ベルリンは抜かりないのは当然でしょうし
これはもうブーレーズの演奏プランに驚嘆するしかありません

具の豊富なお好み焼きが回転するような…   ラヴェル

DGは、意外にボレロの宝庫なんでしょうか
私が未聴なのは、カラヤンの旧録音くらいかも知れません


SinopoliRavel.jpg

ラヴェル Maurice Ravel (1875-1937)
ボレロ Bolero (1928)
フィルハーモニア管弦楽団 Philharmonia Orchestra
ジュゼッペ・シノーポリ Giuseppe Sinopoli (1946-2001)
ドイツ・グラモフォン Deutsche Grammophon 427 644-2 (1988)
(中古:2012年11月Amazon.com Market Place にて購入)

前回投稿にて、マジックペンにて背の黄色を復活させた盤です
10月くらいから始まっているシノーポリ盤探索ですが
この人は結構いろんな作曲家に手を出していますね
マーラー指揮者の印象がやや強めの人ですが
今回のラヴェルなんてのも、最初は想像がつきませんでしたよ
(意外さついでにドビュッシー《海》も収録)

今回のボレロの特徴は、テンポ。演奏時間は14分11秒!
少し前の録音であるアバド (Claudio Abbado 1933-)盤よりも
更に約10秒速いのです。全体にレガートなアバドに対して
ジュゼッペさんは、主旋律がスタッカート気味になっているようで
有名な主題が、やけに弾力性がついた感じがして面白いです

前半で、伴奏のハープが存在感があり
時間と空間をその暖色系の音色でポロンと区切って行くような
のめり込み気味のリズムを中和するようにも聴こえる

チェレスタの入る箇所では
打鍵音が結構聴こえるんですよね
どの音がチェレスタなのかと思うくらい
あまり明瞭には聴こえないことが多いと感じていましたが
打鍵音のおかげで、楽器の存在を意識することができます

とにかく、全体的にいろいろな要素を詰め込んでいて
直径は小さいながらも、具の多様なお好み焼きみたいな…
そんな想像に浸っていることに気づきました

他方、ボレロのリズムを刻む管楽器は大変な印象がありました
前半の方では、ちょっとハラハラするというか
微妙に合ってない感じもするのですが
冷静でありながら憑かれたような、そのテンポとは
微妙な駆け引きをしている気がします
シノーポリが聴かせたいのは音の「奔流」なんでしょうかね

一点、「!」と思い出したことは
この曲が一つのクレシェンドで出来ていることで
上手く説明できないのですが
音量もさることながら、横幅の不思議な広がり意識しましたね
各楽器の出す音の響く範囲が次第に膨張して行く
生き物みたいというか…
う~む「うねり」のようなものと言うのでしょうか

ちなみに私の好きな箇所は
チェレスタの入る旋律A
その直後の弦のピツィカートに導かれる旋律A
弦が入ってから2回目の旋律Bでしょうか
ここのBの情熱的な感じ、これがいいんですよ

30年後の再ボレロ聴体験  ラヴェル

聴楽感は、30年前も今も全く変わらない鮮烈さなのでした

BarenboimRavelBolero.jpg

ラヴェル (Maurice Ravel 1875-1937)
ボレロ Bolero
亡き王女のためのパヴァーヌ Pavane pour une infante defunte
ラ・ヴァルス La Valse
『ダフニスとクロエ』第2組曲 "Daphnis et Chloe" Fragments Symphoniques 2 serie
パリ管弦楽団 Orchestre de Paris
ダニエル・バレンボイム Daniel Barenboim (1942-)
ドイツ・グラモフォン Deutsche Grammophon 400 061-2 (1981)

丁度2年前の今頃、超無骨なボレロの話題で登場した盤ですが
先日、偶然にも中古屋さんにて未開封の状態で購入する僥倖に浴し
聴楽記をものしてみようと思います

まず、当時の投稿では「かなり露骨なテンポの変更が途中にある」
と書きましたが、今回の聴楽でそれが錯覚であったということが判明しました
演奏時間は17:30。既聴楽の演奏では今も最長のものです
チェレスタの入る辺りからにわかに速くなったと記憶していましたが
特にそういうことはなく、弦楽器の入る頃から熱を帯びて
若干急ぐような気になる程度です

錯覚を起こした原因としては、当時の聴楽がLPだというのがあるかも知れません
おそらく、当時(1983年の晩冬頃)の家のプレーヤーのベルトが劣化していて
たまたまその盤のボレロ再生時にその影響が出てしまったと考えられます

回転するメカは劣化が早いですよね。CD時代に入っても
どうしてもトラック1が再生しなくて、すぐに取り替えてもらった盤がありましたが
それでもどうしても鳴らない
そのすぐ後で動作自体しないという事態が発生、寿命と判断し
現行の機械で再生したら、難なくクリアな音響が流れて来る…

今回、約30年弱の期間をおいた聴楽となりましたが
やはり無骨さはそのままですね
バレンボイムは、この盤の後には、交響曲を中心とする
重厚長大路線に向かって行きましたから
もともと華麗路線の私としては、今もほぼ未知の指揮者です
確か彼は若い頃から往年の巨匠指揮者に影響を受けているとされ
30代で録音した、この洗練の極致の作曲家ラヴェルを演奏する時でも
己の信ずるところを悠然と進んでいることはすぐにわかります

このボレロも、パリ管弦楽団が彼のテンポ設定に抵抗があったのかも知れない
序盤で旋律を受け持つ管楽器が、どうも「もちっと速く」と仕掛ける所を
バレンボイムは「ならぬものはならぬものです」としっかり押さえる
そんな雰囲気が伝わって来るような感じが実に面白い
小太鼓奏者の人なんかは、結構抵抗を継続していて
テンポが固持されるまでは、変なタイミングで微妙に強く叩くような
そんな瞬間が見え隠れしていましすね。う~ん面白い

ただ、このテンポで次第に熱を帯びて行くこの演奏は
後半の怒涛のような流れに結びついて、大成功だと思いますね
典雅な舞曲をかなぐり捨てて、威風堂々の大行進曲!
IT技術の粋を凝らしたというのとは異なる
幾分レトロな機械装置そのものが轟然と動作するような大クライマックス!
実際に聴覚に訴える迫力は、私の聴楽体験でも最高の部類に入り
空前絶後だとすら感じられます。いやもう拍手拍手!

グラモフォンの80, 90年代録音には、交響曲等のチクルスの陰から
ひょっこりとこの種の単発管弦楽曲集みたいのが出て来ます
こういうのを落穂拾いして行くのが愉しいんですね☆
プロフィール

quietplace

Author:quietplace
聴楽記へようこそ!
関心事を書きちらしています。

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